bannai452009-03-05

■バーボン・ストリート・ブルース / 高田渡 (2001)■
こういうご時世だからというわけではないが、高田渡の『バーボン・ストリート・ブルース』を読み返している。彼の文章はステージに立っているとき同様、飄々としているが時折見せる毒っ気や皮肉のスパイスなどはやはり高田渡そのものだ。

何年前だったか、春一番に出演した高田渡は広いステージの真ん中にぽつんと座り、ギターを爪弾きながらぼそぼそと歌っていた。開放感のあるステージでは小柄な身体がもっと小さく見えたが、これぞタカダワタル的佇まいは聴き手を引き込む力があることをはっきりと感じ取れた。その日の最後に「生活の柄」を歌ったのだが、ステージ前には(僕を含む)多くのファンがあぐらをかき、身体を揺らしながら、サビの部分をみんなで合唱していたあの光景は今も鮮明に覚えている。

高田渡がこの世を去ってもうすぐ4年が経とうとしている。誤解を恐れず言うが、生きているときでもまるで死んでいるかのような存在だったと思う。あるいは死んでいるがまるで生きているかのような。魂の入れ物だった高田渡はもう存在しないが、彼の歌は間違いなく後世に残されていくのだろうと思う。