good time music .com 36号

bannai452007-11-17

■Satisfied / John Sebastian & David Grisman (2007)■
サイコーにゴキゲンなアルバムだ。僕はいいものを聴くといつも笑いが止まらない。嬉しくて笑ってしまうのだ。ニヤニヤしたりヘラヘラしたりムフフとしたり。この数時間ずっとムフムフしている。

ジョン・セバスチャンとデヴィッド・グリスマンのアコースティック・デュオ・アルバム『サティスファイド』はほんの10日ほど前に発売された新譜だ。2人とも現役バリバリで、セバスチャンは安心できる歌声をこうやって届けてくれた。ジャケットをご覧いただきたい。この雰囲気がそのままパックされている。グリスマンはマンドリンバンジョーをかき鳴らし、セバスチャンはギターとハーモニカと優しい声で歌う。大人のグッド・タイム・ミュージックが堪能できる。フォークブルーズ、ブルーグラス、ジャグバンド・ミュージック。古き良きアメリカン・ルーツ・ミュージックを再構築してくれた。嬉しい。楽しい。

オープニングはセバスチャンのルーツのひとつである、ミシシッピジョン・ハートのカバー「アイム・サティスファイド」。この優しさは何だ。居眠りしているとそっと毛布をかけてくれるような優しさ。あたたかい。今年の冬はこの1枚があれば暖房装置は必要ない、というのは言い過ぎか。グリスマンのインスト曲もスプーンフル時代の「イッツ・ノット・タイム・ナウ」「ココナッツ・グローヴ」の再演もあたたかい。木と土の匂いもする。エイモス・ギャレットの『アコースティック・アルバム』と併せて聴けばなお良し。


この新作の奥のほうにはウッドストックの街並が見える。日の出から少し経ったモヤがかかったウッドストック。濃いめのコーヒーをすすりながら聴くのがいい。ベーグルを少しオーブンし、ブルーベリージャムとバターをのせてかじってみよう。2杯目のコーヒーとヨーグルトを食べる頃、アルバムはラストの「ジャグ・バンド・ワルツ」にさしかかる。マッドエイカーズのアルバムのラスト「アメイジング・グレイス」を思い出し、ニヤリとする。ポール・バタフィールドとセバスチャンのハーモニカのみによる演奏は心が和んだものだ。そんなことを思っていると「ジャグ・バンド・ワルツ」が終わり、数十秒の沈黙のあと、シークレットトラックの「デイドリーム」が突如流れ、手にしていたコーヒーカップをそっとテーブルに置き、再びニヤリとする。


...何も急ぐんじゃない。じっくり歩け。一歩ずつ。我々はそうやってこのアルバムを作ったんだ。だからこそ『Satisfied』なんだ。

そんなことばが聞こえた気がする。そして答えは決まっている。
「We're Satisfied!!」