bannai452007-12-13

■The Best Of The Band / The Band (1976)■
ザ・バンドの初体験は聴く、ではなく観る、だった。NHKで再放送されていた『エドサリヴァン・ショウ』で「クリプル・クリーク」を歌っている5人の姿はとても奇妙で、他の出演者、時代は違うが例えばビートルズストーンズ、エルヴィスやカーペンターズとはかけ離れた非スター性がブラウン管から放出されていた。60年代後半に流行したフラワーでサイケデリックなファッションでもなく、貫禄のある髭面の5人は僕に何かを訴えかけてくる。

数日後、「クリプル・クリーク」が聴きたくてCDショップに行き、茶色いジャケットの『ザ・バンド』と白いジャケットのベスト盤を見比べ、「とりあえずベスト盤を買っておけば間違いないだろう」と思い輸入盤の『ザ・ベスト・オブ・ザ・バンド』をレジに持って行った。

帰宅後、早速聴いてみる。1曲目は「クリプル・クリーク」。映像を何度も観ていたからこれはすんなり入ってくる。2曲目の「シェイプ・アイム・イン」、「ザ・ウェイト」...。聴き続けるにも僕の頭の中は?マークでいっぱいになり、一気にクールダウン。16歳のガキが聴くにはあまりにも深みがありすぎて理解に苦しんだ。言うまでもなくしばらくは棚の中で長い眠りにつく1枚になってしまった。

再会を果たすのは19歳の誕生日間近。友人Sに作ってもらったカセットテープにザ・バンドの文字。曲は「ホエン・ユー・アウェイク」。ベスト盤を棚からひっぱり出す。入っていない。しかし猛烈にいい。欲しくなった。翌日CDショップへ走り込み、『ザ・バンド』を探す。即レジへ。

実はボブ・ディランでも同じようなことがあり、初めに買った『グレイテスト・ヒッツ第1集』は長い間棚で眠っていた。ディランとザ・バンド、この2組はアメリ音楽史上偉大なアーティストであることは間違いない。が、出会うタイミングや聴く側のキャパシティが伴わなければそう易々と心に響いてこない。と僕は思う。少なからず僕はそうだった。送り手からこちらに歩み寄るようなことはない。そういう甘みなんて存在しない。あるのは渋みや苦みだ。子供から大人へ背伸びしたくなる時期にこそ似合う音楽。コーヒー牛乳しか飲めなかったガキがある日を境にブラックコーヒーを好むようになるのと同じようなものだ。

青かったあの頃を少し反省しながら聴くザ・バンド、結構イケる。