good time music .com 59号

bannai452008-02-14

■L.A., Memphis & Tyler, Texas / Dale Hawkins (1969)■

ぐつぐつと煮立った鍋料理のようなイントロから「My Name is Dale Hawkins」と始まるデイル・ホーキンスの『L.A.、メンフィス&タイラー、テキサス』。探しに探していた1枚にも関わらず去年CD化されたことを全く知らなかった。Amazonで何気なく検索してヒットしたときには奇声を発してしまった次第である。

スワンプ・ロック前夜祭、ボビー・チャールズのマイナー作品が収録、という2本の柱が僕のハートを射止め続けていた。50年代のロックンローラーのスワンプ化というのはデイル・ホーキンスに限ったわけではない。先陣を切ったのは間違いなくエルヴィス・プレスリーだろう。50年代に活躍したアーティストが原点回帰した60年代後半から70年代初頭は他にもエヴァリー・ブラザーズ、リッキー・ネルスン、ジェリー・ゴフィン、リンク・レイなどもそれぞれ自己流のルーツ・ロックを展開していた。デイル・ホーキンスの従兄弟でもあるロニー・ホーキンスのバックを務めていたザ・ホークスがザ・バンドとしてルーツ・ミュージック再探訪の舵取りだったことも付け加えておくべきだろう。

タイトル通りL.A,、メンフィス、テキサスの3カ所でレコーディングされたアルバムで、L.A.録音にはジェイムス・バートンや無名時代のライ・クーダーがクレジットされている。メンフィス録音ではダン・ペンとスプーナー・オールダムの黄金コンビ、ウェイン・ジャクソン、さらにタジ・マハールもパーカッションとハーモニカで参加。エルヴィスで有名な「ハウンド・ドッグ」のスワンプ・アレンジは豪快かつ痛快だ。残るテキサス録音でボビー・チャールズの書き下ろし曲「ジョー」と「ラ、ラ、ラ、ラ」が吹き込まれている。同じルイジアナ出身の2人は古くからの付き合いだという。

楽曲によって録音地が異なるが違和感など皆無である。ぐいぐいとその泥沼のようなサウンドに引き込まれていく。69年作品。時代の節目にアメリカ南部ではこれほどまで潔くも清い、極めて純度の高い音楽が生まれていたのか。感服というほかない。