bannai452008-09-23

■Having A Wonderful Time / Geoff Muldaur (1975)■
ブルーズ、ジャグバンドという下地をまずこしらえておき、ジェフ&マリア〜ベター・デイズを経たジェフ・マルダーが75年に発表した世紀の傑作アルバムだ。何年もかけてコトコトと熟成したかのような旨味、渋味なのか甘味なのか判断に迷うエイモスの星屑ギターが随所で光る。

ジェフ流アメリカン・ルーツ・ミュージックの玉手箱という趣きで、ブルーズはもとよりゴスペル、ポピュラー・ソング、ジャズ、R&Bとなんでもこい。この懐の深さは筆舌に尽くし難い。今世紀も語り継がれていくエイモスの超絶プレイが刻まれた「ジー・ベイビー」はハイライトのひとつだろう。ジェフのヴォーカルとの相性の良さを再認識することもできる。余談だが、酔った席でこの曲が流れると僕の周りの人間は必ずと言っていいほど、目を閉じ、耳をすまし、酒ではなくこのプレイに酔いしれる。それは魔力と言っても過言ではない。あるいは磁力のようでもある。一転してヒューイ・ピアノ・スミスの「ハイ・ブラッド・プレッシャー」ではギラギラとしたジェフとエイモスが堪能できる。

この傑作はボビー・チャールズの「テネシー・ブルース」で締めくくられる。元妻マリアと愛娘ジェニーのハーモニーがいつまでも、いつまでも耳の中で響き渡る。