bannai452009-07-11

■日暮しグルーヴィアン / 風博士 (2009)■
風博士という名前はずいぶん前から僕の脳に刻み込まれていた。しかしそれは「風博士」という字面だけで彼の演奏する音楽のことは全く気にもかけていなかった。少しのきっかけと、偶然(あるいは必然)の出会いまでに至らなかったということなのだろう。
記憶を辿ると、それはラリーパパ&カーネギーママの活動期間とリンクする。いくつかのライヴイベントで彼らは同じステージに立っていたはずだ。当時、僕は実際に風博士のパフォーマンスを目にはしていないが、フライヤーやインターネット上で、やはり文字としての「風博士」に出会っている。


そして、2009年。当時、風博士を聴こうとしなかったことに疑問を感じている。むしろ憤りすら感じている。とても素晴らしい音楽だ。気持ちいい。ルーツを探ろうと思えば森の奥にひっそりと存在する瑞々しい湧き水のように溢れて出てくる。

『日暮しグルーヴィアン』。全9曲。今年3月に発表されている。1曲目から4曲目までの流れが特に素晴らしい。優しく跳ねるアコースティックギターと透き通った風博士の歌が風に乗って僕の部屋を訪れる。


あの日、ヒッピーみたいな僕の友人がラジオで「風博士の風まかせ」を聴かなければ、そしてあの日、ヒッピーみたいな彼が自転車で京都に向かわなければ、僕の人生における風博士は涼しくて心地良い初夏の夜風のように、するりと通り過ぎていたかもしれない。
僕は思う。
そこには少しのきっかけがあり、必然の出会いが待ち伏せていたのだと。