bannai452007-09-15

■アイ・ゲット・ジョイ〜ブリーカーストリートの青春 / Peter Gallway (YDCD-0015)■

ピーター・ゴールウェイのことを書き出すと長くなる。ジェイムス・テイラーキャロル・キングあたりを入り口として70年代のシンガー・ソングライター系のアーティストで結局辿り着いたのがピーター・ゴールウェイ。「世界でいちばんのSSWアルバムはどれだ!?コンテスト」なるものが存在すれば、僕は迷うことなく1972年の『ピーター・ゴールウェイ』をあげる。そういうことだから書くと長くなるのである。


ピーター・ゴールウェイ(紙ジャケット仕様)

ピーター・ゴールウェイ(紙ジャケット仕様)

静かなる狂気。
黒と白と茶。まずこのジャケットから味わってから、A面に針を落とすと思いもよらないほどスワンプな仕上がりの「ウォッチ・ユアセルフ」で少し面食らいながらも2曲目以降の内省的な世界に片足ををとられ、バランスを崩し、いよいよ後半の「カム・オン・イン」で虜になる。というのがこのアルバムの流儀である。これすなわち、シンプルにして真実。
歌い手とバックのメンバーの立ち位置が絶妙で、あくまでも主役は歌い手であることを明確にしているんだけれども適材適所なフレーズを随所に盛り込んでくるザ・セクションの面々。ザ・セクションがもう少し前に出るとジェイムス・テイラーの『ワン・マン・ドッグ』になる、という仕組み。


アイ・ゲット・ジョイ?ブリーカ

アイ・ゲット・ジョイ?ブリーカ

紆余曲折があったにしろ、一度も世間からスポットライトが当たらなくても、30年以上の活動歴はさすがであって、99年に満を持してリリースしたこのソロアルバム。後追い世代はどうしてもオンタイムでの感動に恵まれないから本当に嬉しい1枚だった。当時はハース・マルティネスとピーター・ゴールウェイが同じレーベルからアルバムを出すなんてとても贅沢なことに思えた。いや、これは贅沢の極みかもしれない。

余計なものを装飾しない素の美学、これこそピーター・ゴールウェイの最大の魅力で、「ライツ・オブ・ロンドン」「ソングライター」「アイ・ゲット・ジョイ」「ワン・カインド・ワード」など名曲多数。

フィフス・アヴェニュー・バンドから始まったピーター・ゴールウェイの本格的な音楽キャリアは70年代前半にオハイオ・ノックス名義で実質のソロ作を発表し、72年に前述の傑作を生み出したものの、そこから若干のブランクが。70年代中盤から後半にかけての空白の期間(とされていた)にも実は地道に活動を続けていたことを証明してくれる音源が今年の春に発掘されている。

ONE SUMMER DAY

ONE SUMMER DAY

76年に盟友ラリー・ジョン・マクナリーの自宅でレコーディングされた貴重な10曲。これを聴くと72年の傑作盤と78年の『オン・ザ・バンドスタンド』が一本の線で繋がる、という仕組み。ホームレコーディングならではのネイキッドな音に引き込まれること必至。

本当に長くなるので今回はvol.3-1(これでも随分と削った)。次回は3-2。99年の来日公演のことも書きたくなった。というのも押し入れから引っ張り出した資料の中にこの日のセットリストもあったので。