bannai452007-09-20

■Lay It All Out / Barry Mann (YDCD-0036)■

驚愕し、そののち感動。
音楽の良心が詰まった世紀の隠れ名盤、バリー・マンの71年作『レイ・イット・オール・アウト』がdreamsville recordsより2000年8月25日に世界初CD化。90年代後半、ワーナーがスタートさせた名盤探検隊への返答ともいうべき快挙。オリジナルLPは定価の数倍、という激レア盤。酷いところでは万単位の値が。CD化になる前に僕が買ったオランダ盤でも5800円。諸事情が絡み合ってCD化が困難、とされていた盤だから19歳だった僕は無理をして買ったけれど...。

今年30歳の僕がレコード収集を始めた90年代中盤というのはちょうどクラブDJが提唱(?)したレアグルーヴと密接な関係があって、そういうお皿には未CD化という付加価値がついて値段も跳ね上がる仕組みだった。たしかに貴重だしそこいらで軽く聴けるモノではないから仕方がないのだが、モノによっては当時のプレス数が少ないから、とか売れていない、とか安直な理由での値の高騰もあったように思う。

リー・マンは歌手としての才能と作家としての才能を併せ持った人だからソロアルバムのクオリティーを問う必要がない。未CD化にして内容も一級品。これこそ『レイ・イット・オール・アウト』。71年というと、同僚ともいえるキャロル・キングが『つづれおり』で一躍スターダムにのし上がった時期。彼女にインスパイアされて制作にとりかかったという伝説も残るこのアルバムはセルフカバーと書き下ろしの新曲で構成されている。セルフカバーではデルフォニクスに提供した「ホエン・ユー・ゲット・ライト・ダウン・トゥ・イット」、「オン・ブロードウェイ」(ドリフターズ、63年全米9位)、「ふられた気持ち」(ライチャス・ブラザーズ、64年全米1位)などに注目したい。自作ではこのアルバムの制作意図を歌詞にしたと言われている「アイ・ハード・ユー・シンギング・ユア・ソング」がアルバムのハイライトと言える。バックは『つづれおり』のレコーディングメンバー。ダニー・クーチ、ジョエル・オブライエン、チャールズ・ラーキー、そしてキャロル・キング


長い時間をかけてやっと壁が崩れ落ちたよ
取り散らかった人生のかけらは
遠回りをして
ひとつのところに集まったよ

すると力強く生きる君の歌声が聴こえたんだ
それまでの人生が間違っていることに気付いたんだ
一緒に歌わずにはいられなかったよ


『つづれおり』というアルバムは聴衆の心を魅了し、同時に当時の音楽人にも計り知れない影響を与えたアルバムだったということがこのエピソード、この歌でよくわかる。30年以上たった今も名盤として重宝されている理由の始まりだったわけだ。

そもそも2000年というのはバリー・マン・イヤーだった。年明けに久々のソロ作『ソウル&インスピレイション』をリリースし、2月には75年作の『サヴァイヴァー』が世界初CD化、そしてトドメがこの『レイ・イット・オール・アウト』。新作と世界初CD化を同時に味わえるのは後追い世代の特権である。


Soul & Inspiration

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サヴァイヴァー

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