bannai452007-10-17

■Whispering Pines〜Live at The Gateway, Saugerties, NY〜 / Richard Manuel (YDCD-82)■

ザ・バンドで唯一ソロアルバムを制作しなかった、リチャード・マニュエルの発掘ライヴ音源。彼は1986年に自殺している。その前年、1985年10月12日に行われた初のソロ・コンサートをあますことなく収録したのがこのライヴ盤である。場所はウッドストック、ソーガティーズ。リック・ダンコ、ジム・ウィーダーもゲスト参加しているが、基本的にはマニュエルのエレピ弾き語りによるシンプルなパフォーマンス。野性味と哀愁が漂うマニュエルの歌とともにシンプルがゆえに心にずっしり響く。

演奏曲の大半はザ・バンド時代の代表曲が並ぶが、オープニングはボビー・チャールズ作の「グロウ・トゥ・オールド」。1960年にファッツ・ドミノがヒットさせたニューオーリンズR&Bクラシックのひとつ。作者のボビー自身も72年のベアズヴィル盤に吹き込んでいる。「我が心のジョージア」はザ・バンドのラスト作『アイランド』にも収録されている。ホーギー・カーマイケル作、その後レイ・チャールズがチャートに送り込んだ名曲。ジム・ウィーダーのギターがロビー・ロバートソン風でニンマリさせられる「キング・ハーヴェスト」、リック・ダンコとマニュエルの共演が今となっては涙を誘う「クレイジー・ママ」(J.J.ケイル)。ステージでのやりとりがとても微笑ましい。泣ける。泥臭いウィーダーのギターも素晴らしい。

dreamsvilleはジム・ウィーダーのソロを2枚、ガース・ハドソンの新作、リック・ダンコの遺作、そしてリチャード・マニュエルの発掘音源と、ザ・バンド関連の音源を惜しみなく届けてくれた。どれも感動と驚愕の連続だ。しかし、しかしである。全盛期と比べても何ら劣らないリチャード・マニュエルの怪唱は聴けば聴くほど胸に刺さる。


ウィスパリング・パインズ~ライヴ

ウィスパリング・パインズ~ライヴ