bannai452007-10-25

■Bags And Things / Dennis Lambert (YDCD-0098)■

ダン・ペン、ドニー・フリッツ、ジェリー・ゴフィン、ランディ・ニューマン、バリー・マン、ボビー・チャールズ、エリック・カズ、ポール・ウィリアムス。彼らに共通していること、それは作家としてヒットを生み出したことがある、それは70年代に味わい深いSSWアルバムを制作している。かつてのヒット曲は作者のおれ達が歌うことに意味がある、と言わんばかりに聴かせてくれている。作家は作曲や作詞の才能に長けていたからこそ作家としてヒットを生んでいる。だからといって抜群の歌唱力を伴わせているか、というとそうでもない。ダン・ペンやドニー・フリッツらは南部ならではの泥臭さを放ちながら独特のヘタウマヴォーカルを、ジェリー・ゴフィンのアルバムなどスワンプ色濃い演奏をバックにもはや唸っているようにも聴こえたりもする。

一方でバリー・マンのように作家時代にも自身が歌いヒットを出したアーティストも存在する。当時から歌唱力のある作家として仲間内では有名だったというし、実際に70年代の諸作はソングライターとしてもシンガーとしても素晴らしいクオリティだ。何度も言うが『レイ・イット・オール・アウト』とはそういうアルバムなのである。そしてこのアルバムが発表された翌年、1972年にデニス・ランバートという作家が『バッグス・アンド・シングス』というアルバムを制作した。壮大な作風やその歌のパワーから"裏バリー・マン"というよな形容もされている。たしかに。『レイ・イット・オール・アウト』を聴いたあとに『バッグス・アンド・シングス』を聴くと実にスムーズに耳に入ってくる。提供したオリジナルを凌駕するような楽曲も多い。フィフス・ディメンションの「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」、ライチャス・ブラザーズ「ドリーム・オン」、ダスティ・スプリングフィールド「オブ・オール・ザ・シングス」など、一級品のヴォーカルアルバムだ。

リー・マンやデニス・ランバートのような作家のプロ根性が滲み出ているアルバムもこれを機にぜひ聴いてみていただきたい。いいメロディがあって、いい歌がある。あとは何も必要ない。


バッグス・アンド・シングス

バッグス・アンド・シングス