bannai452007-11-27

■Baby, You're my son! / チョウ・ヒョンレ (YDCD-0127)■
イントロのドラムでどれだけの人間が頬を緩ませるだろう。チョウ・ヒョンレの新曲「ベイビー」は、旧友・辻凡人の叩く硬質なドラムから始まる。

去年、ソロ活動第1弾作品として自主制作盤『My Name Is...』を発表しているのだが、そこに「ベイビー」のファースト・バージョンが収録されている。自宅録音によるアコースティック・ギターの弾き語り、唯一リコーダーのオーヴァーダブだけが施された極めてシンプルな音を聴かせてくれた。それは70年代初頭のカナダのシンガー・ソングライター的佇まいで、ブルース・コバーンやトニー・コジネクを彷彿とさせた。

かつてジョン・レノンは「ビューティフル・ボーイ」を、ボブ・ディランは「フォーエヴァー・ヤング」を。彼らは愛する息子をテーマにした曲を世に送り出している。そういえばジェシ・コリン・ヤングも愛娘に「ソング・フォー・ジュリー」を捧げていた。彼らと同じようにチョウ・ヒョンレも息子のことを思い、このシングル2曲を堂々と歌い上げている。かつてのバンド時代よりもマイルドで優しく父の愛に満ち満ちた歌。驚くべきは、内容が私的でありながらもそこには聴衆を巻き込む力がある。僕には息子や娘はまだ存在しないが、少なくとも僕は共感できたし、彼の父の愛をしっかりと感じ取れた。同時にもし自分がこういうふうに歌われたら幸せだな、とも思えた。

そして旧友の参加。ドラムに辻凡人、秀逸なジャケットデザインは水田十夢。ヴォーカルに深めのエコー処理を施してあるのも曲のテーマに合ったもので心が洗浄される思いだ。カップリングの「祈り/You're my son!」も素晴らしい楽曲だ。ジョン・セバスチャン直系のグッド・タイム・ミュージック路線。アコースティックギターとハーモニカのコンビネーションがたまらない。ソングライターとして、ヴォーカリストとしてのチョウ・ヒョンレを存分に発揮してくれている。素敵じゃないか。

サイトの一時的閉鎖で早とちりをしたのは僕だが、LONERさんのコメントもあったようにdreamsville recordsは今後も活動を続けていくという(アドレスが変わり、http://www.dreamsville.jp/に)。そしてこのシングルが発売された11月25日はdreamsville recordsの誕生日だ。満9歳。ということはハース・マルティネスの『ミスター・ドリームズヴィル』から9年が経過したということだ。この9年間、僕は夢街の住人のひとりだった、と自負している。これからも住人でいられることが嬉しい。

私的なことだが、この11月25日に僕たちは結婚式を挙げた。互いの家族の愛に、仲間の愛に囲まれた特別な1日となった。そしてこの同じ日、僕の友人に2人目の子供が生まれた。全てが偶然のことだった。が、これは偶然なのか?ひょっとすると必然では?とひとり妄想にふけっている今日この頃だ。とどのつまり、チョウ・ヒョンレの新曲を友人ニコプンとだんなさんと生まれたばかりの娘ちゃんに捧げたい。おめでとう。


目を開ければ そこにはママがいて
やさしい眼差しを投げかけている
振り返れば そこにはパパがいて
君の行く先を見守っている