bannai452007-12-18

■Rhythm & Blues / Peter Gallway (2007)■


ミック・ジャガーが50歳で歌っていると思うか?」


映画『あの頃、ペニー・レインと』のワンシーン、新任の敏腕マネジャーがバンドメンバーに売れるためには今がその時と言わんばかりの高揚ぶりで言い放った台詞だ。

結果は言うまでもないだろう。今も現役バリバリで相変わらずスキャンダラスなニュースを届けてくれたりもしている。ミック・ジャガーに限らず、60年代から活躍しているアーティストなりグループなり、当然ながら21世紀にもなると60歳を越えている。彼らは年齢を重ねた人間独特の味わいや深みが増し、衰えというものを感じさせることが少ない。1947年生まれのピーター・ゴールウェイも今年60歳だ。70年代は「老成の美学」みたいなものがあったと思う。当時の彼らの風貌を見れば瞭然だ。72年盤のジャケットに映るピーター・ゴールウェイは25歳だ。

ピーター・ゴールウェイの新作『リズム&ブルース』はアルバム名だけでは黒人音楽のそれと思うが、タイトル曲は光と影、アップ&ダウンを繰り返しながら生きていくライフスタイルをリズムとブルースに例えているという。歌詞カードが無いのが残念でならない。ライナーノーツによれば、友人が語った言葉やふと耳に入った会話などにインスピレーションを受けたというが、やはりシンガー・ソングライターの楽曲というものはその曲で何を歌っているのか、何を感じて歌にしているのか、を知りたいものだ。

大手CDショップにはピーター・ゴールウェイの諸作がずらりと並んでいる。新作から旧作まで。少し前では考えられなかったほど現在は充実している。『フィフス・アヴェニュー・バンド』『オハイオ・ノックス』『ピーター・ゴールウェイ』という三種の神器はまず必須だ。この3作無くして真実は見えず。だがその神器に勝るとも劣らないのが、この『リズム&ブルース』ではないだろうか。70年代にはなかった円熟、達観、そういう類いの言葉が聴こえてくる傑作だ。