bannai452008-01-05

■Great Speckled Bird / Great Speckled Bird (1969)■
2008年はエイモス・ギャレットのことを書こうと考えている。バンド時代からソロ、及びセッション参加作品まで、全作品とまではいかないが重要作、必聴作は押さえていく予定だ。聴く者全てをとろけさせてしまうそのギタープレイは"夢の仕業"、"酔いどれギター"、"星屑ギター"などと呼ばれファンに愛されてきた。どっぷりハマるとその後の音楽人生が一遍することは間違いない。僕はそのひとりである。

エイモス・ギャレットは1941年カナダ・トロント出身。今年で67歳を迎える。年齢的には隠居してもおかしくないが、去年は来日し健在ぶりを知らしめてくれた。ギターの名手として有名だが、ピアノやトロンボーンも得意とする。そして無類の酒好きであるということも付け加えておこう。アメリカのSF作家スパイダー・ロビンソンをして「神様が酔っ払ったかのようなギタープレイ」と語っている。


More Hits From Tin Can Alley

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68年、エリック・アンダースンの『モア・ヒッツ・フロム・ティン・キャン・アレイ』にギターでクレジットされているが、本格的なキャリアは69年のイアン&シルヴィアのグレイト・スペックルド・バードのギタリストとして参加したことから始まっている。フライング・ブリトウ・ブラザーズのカナダ版という趣きで、カントリーロック特有の泥臭く跳ねるリズムとサウンドがとても印象的だ。アルバム・プロデュースはトッド・ラングレン、レコーディングはナッシュヴィル、エリア・コード615のメンバーも参加し、ベアズヴィル・レコードからリリース、という似て非なる土地柄が色濃く出た、ある種の異種格闘技のような組み合わせだからこそ、こういう音が出せたのかもしれない。

エレクトリック、アコースティック・ギターで全編ソリッドなギタープレイを堪能できるが、あくまでもカントリーロック・グループであることを踏まえた上でのプレイで、その後のエイモスとは少々異なるニュアンス。例えるなら後期バーズのクラレンス・ホワイトのような、やはりカントリーミュージックを意識したプレイが目立つ。そんななか、特に注目すべきは「ディス・ドリーム」だろう。その後のエイモス・ギャレットを予感させるプレイがじっくり聴ける。控えめながらもたしかな星屑ギター。ボビー・チャールズの「アイ・マスト・ビー・イン・ア・グッド・プレイス・ナウ」を彷彿とさせる。他にも「フライズ・イン・ア・ボトル」でのアコースティック・ギターによるソロも素晴らしい。一方「スマイリング・ワイン」ではエイモスお得意の低音コーラスがしっかりと聴き取れる。


フェスティバル・エクスプレス [DVD]

フェスティバル・エクスプレス [DVD]

映画『フェスティヴァル・エクスプレス』にはグレイト・スペックルド・バードの貴重な演奏シーンが残されている。デラニー・ブラムレット、グレイトフル・デッドのメンバーも参加しての「C.C.ライダー」を収録。錚々たるビッグネームの陰に隠れ、若かりしエイモスの姿が映し出されるのはわずか数秒だが、当時の大型フェスの記録映画としてモンタレーやウッドストックなどと同様に価値ある映像作品であることは触れておきたい。

グレイト・スペックルド・バードは短命に終わり、エイモス・ギャレットが本領を発揮するのは翌70年。ジェフ&マリアの『ポテリー・パイ』だ。70年代のグッド・タイム・ミュージックの扉が開かれた瞬間である。