bannai452008-01-15

■In My Own Time / Karen Dalton (1971)■
テキサス生まれオクラホマ育ち、60年代初頭のグリニッジ・ヴィレッジで活動を始めたフォークシンガー、カレン・ダルトン。その才能はフレッド・ニールのお墨付きで、内省的で嗄れた歌声は唯一無二の存在感を聴き手に与える。69年にデビューし2作目にあたる『イン・マイ・オウン・タイム』は1971年発表。エイモス・ギャレットのみならずジョン・サイモン、ジョン・ホール、ビル・キースなどウッドストック派がバックアップ。プロデュースはハーヴィ・ブルックス。全曲カバーで構成され、その幅の広さに驚かされる。例えばパーシー・スレッジの「男が女を愛する時」など解釈の視点からしてカレンらしいというか。ビリー・ホリデイっぽいこのしょっぱい声でこの歌を選ぶ度胸というか。

ギタリストはカレンを含め4人。エイモスは後世語られるような超絶ソロをここで残しているわけではない。むしろジョン・ホールのソロやビル・キースのスティール・ギターがよく聴こえてくる。それでもやはり主役はカレン。彼らがバックアップする楽曲も素晴らしいが、バンジョーをかき鳴らしながら歌うカレンの姿を想像するだけでもゾクゾクする。



■Double-Back / Happy & Artie Traum (1971)■
ハッピーとアーティのトラウム兄弟名義として2作目にあたる、フォーク系ウッドストックサウンドの傑作である。エイモス・ギャレットは珍しくスライド・ギターを担当している。70年にグレイト・スペックルド・バードから旅立ち、ウッドストック一派からひっぱりだこな状態になりつつあったこの時期のエイモスはジェフ&マリアの『ポテリー・パイ』でその存在感を示したあとは、翌年以降の多忙さを予見して歩調を緩めたかのような印象だ。72年は自身が在籍したグループ、ハングリー・チャックを含め年間10枚のアルバムにセッションマンとして活躍している。1972年はシンガー・ソングライター全盛期であるとともに、エイモス・ギャレット繁忙期でもある。