bannai452008-02-11


■Something/Anything? / Todd Rundgren (1972)■
「アイ・ソー・ザ・ライト」「ハロー・イッツ・ミー」「ウルフマン・ジャック」の三大ヒットを収録したトッド・ラングレン初期の代表作。トッドには少しやるせない思い出がある。中村一義が鮮烈なデビューを飾った90年代中盤から後半、同じクラスの女の子が中村一義に首ったけで、少々強引ではあるがそれならトッドに通じるものがあるだろうと思い、聴かせたところ「???」な反応が悲しかった。これに懲りることなく、もろキャロル・キングな「アイ・ソー・ザ・ライト」を『つづれおり』を所有していた友人Kに聴かせても少々空振り気味だったことも哀しかったが、そういうことに限ってよく覚えていたりもする。

トッド自身やグループを組んで奏でるポップで少々ねじれた音楽性とウッドストックという土地の間には微妙な距離感と違和感がある。が、ベアズヴィルのハウス・エンジニアとして、またはアルバム・プロデューサーとして70年代初期から彼の地では重要な存在だった。グレイト・スペックルド・バードやアメリカン・ドリーム、B級バンドだったジェリコのプロデュース、ザ・バンドの『ステージフライト』やジェシ・ウィンチェスターのアンペックス盤のエンジニアリングなど多岐に渡る。器用がゆえにつかみどころのないところがトッドらしいといえばらしい。

大半がワンマン・レコーディングによる、めくるめくきらびやかな音楽世界が印象的な2枚組アルバム『サムシング/エニシング?』だが、サイドDだけはウッドストック、ニューヨークの名手がそろい踏みした一発録りによるセッション大会だ。「ピス・アーロン」はエイモス・ギャレット、ベン・キース、ジム・コルグローヴが参加したハングリー・チャック的展開。跳ねるような独特のサウンドが心地良い佳曲だ。次曲「ハロー・イッツ・ミー」へとスムーズに続くところも流石である。このアルバム、僕はサイドAとDがお気に入りだ。