bannai452008-04-23

■Rod Taylor / Rod Taylor (1973)
アサイラムの、デヴィッド・ゲフィンの根回しにより豪華なメンツが集結し、良質な音楽世界を構築したにも関わらず、その思惑と戦略が見事に外れてしまった不遇の名作だ。ジェシ・デイヴィスライ・クーダー、ジョ二・ミッチェル、ボニー・ブラムレット、ビル・ペインアンドリュー・ゴールドリー・スクラージム・ケルトナー、ラス・カンケル、ケニー・エドワーズ、レッド・ローズ、ラリー・ネクテル、ジム・ホーン、アーニー・ワッツ他。このメンツを羅列するだけでそのサウンドの安定感、躍動感を想像できるだろう。

肝心の主役、ロッド・テイラーのアクの濃さも負けてはいない。当時、第二のリオン・ラッセルとして売り出そうとしていたその歌唱力は素晴らしく、コクのあるしゃがれ具合はリオン・ラッセル以上トム・ウェイツ未満、というとピンと来るだろうか。時折覗かせる繊細さはマーク・ベノを彷彿とさせたりもする。

98年の世界初CD化に際し、ライナーを担当した伊藤秀世氏のロッド・テイラーに対する並々ならぬ愛情と、良いと思えるものを埋もれさせることなく世に送り出そうとする真摯な姿勢には心を打たれる。やはり、そういうことなのだ。信念を持つことの大切さを改めて教えてもらった気がする。