bannai452008-05-23


ベター・デイズ名義の正規盤としてはスタジオ録音の2枚と、未発表音源の一部がベアズヴィル・ボックスと再発盤に収録されているが、99年に日本のみの発売となった73年の未発表ライヴ『ライヴ・アット・ウィンターランド』も重要だ。オリジナル作品として捉えても問題ないほどのクオリティーである。デビュー盤発表後の73年2月のライヴ音源で、ここでしか聴けない楽曲も多数含まれている。

「ポールの存在をなくしては、我々の果たして何人がここまでたどり着いていたことだろうか」というウィンターランドの経営者ビル・グレアムの紹介があり、アルバム未収録の「カントリーサイド」からスタートする。冒頭から凄まじい迫力で、バタフィールドのハーモニカがむせび泣き、ビリー・リッチの太いベースとクリス・パーカーのドラムが絡み付く。そこへエイモスの鋭角鈍角が交錯するギターが入り、聴き手を高揚させる。このライヴでは2枚目を発表する前に早くも「スモール・タウン・トーク」を披露していることにも注目したい。他にもボビー作品は「ヒーズ・ガット・オール・ザ・ウイスキー」を14分もの長尺バージョンで演奏。バタフィールドのハーモニカ・ソロからクリス・パーカーのドラム・ソロへと続く中盤から後半が圧巻だ。彼らの代名詞ともいえる「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラヴ」の溶解度も尋常ではない。

このライヴ盤の発売に当たってのジェフ・マルダーの寄稿文は何度読んでも胸が熱くなる。そして日本のみの発売だから日本人でよかったと思う反面、彼らのライヴを体験できる当時のアメリカ人だったらよかったな、と欲張りな後悔をしてしまうのである。