bannai452008-10-10

■Homemade Songs / Bobby Charles (2008)■
湖畔で愛犬と戯れていたボビー・チャールズも気付けばもう70歳である。キャリアは実に53年。だが、発表したアルバムは編集盤を除けば僅か6枚。キャリアと作品数がこうも反比例するアーティストも珍しいものだ。それよりも70歳という高齢にも関わらず、地道ながらもこうして音楽を奏で続けてくれていることがファンとしては何より嬉しい。

「バット・アイ・ドゥ」と「カウボーイズ・アンド・インディアンズ」は87年の『クリーン・ウォーター』と同テイク、「マルディ・グラ・ソング」は94年の『君がここにいてくれたなら』と同テイクということである。その他の新録はルイジアナのモーリスやニューオーリンズナッシュヴィルの各地で録音。切れ味鋭いサニー・ランドレスのギターが全編で大活躍し、ボビーのもさっとしたルーズなヴォーカルとのブレンド感がとても興味深い(余談だが、サニー・ランドレスの活躍ぶりを聴いてふと頭をよぎったのは、ジム・ウィーダーだった。再編ザ・バンドを牽引したギタリストだ)。他にもスプーナー・オールダム、マック・レベナック名義でDr.ジョンなども参加。ブックレットにはボブ・ディランによるボビーへの挨拶文もある。

タイトル曲は72年のウッドストック盤の録音時に残されていた未発表曲。現行の再発盤ではボーナストラックとして収録されている。今回は「テネシー・ブルース」も再録しているし、72年盤から抜け出せない僕としては嬉しい限りだ。過去の楽曲やこれまでのアウトテイクを織り交ぜながらの新作ではあるが、先に述べたように今も元気に活動していることがボビー・チャールズの魅力のひとつなのだ。盲目なファンかもしれないが。何年もかけて録音したものをじわりじわりと発表するなんてとても素敵だ。これこそスロウ・ミュージックの極みである。