bannai452009-02-06

■Chu Kosaka in Osaka 2001 part2■
2001年11月16日金曜日、小坂忠は僕の目の前でウォーミングアップ程度ながら「ありがとう」のイントロを爪弾いていた。夢ではない、現実だ。それは大型レコードショップのインストアイベント直前の楽屋でのことだった。

どうして僕がそんな場所に居合わせたかというと、こともあろうかそのインストアイベントのステージにご一緒させていただいたからである。水面下でいろんなことが起こり、人と人との繋がりの賜物でそういうことになった。縁というものを強く感じ、同時に夢は願えば叶うこともあるのだと思った。

とはいえ、ステージで声を発した記憶がほとんどない。「はい、ええ」とか「あ、そうなんですね」とか相槌程度のものだ。そして、その日の記憶は全てが曖昧で、しっかり覚えているのは僕の番組のヘビーリスナーだったabaさんが声をかけてくれたことと、その日の自分の服装くらいだ。青いニット帽、くたびれたサックスブルーのラルフローレンのボタンダウン、リーバイス517にアディダスのランナー。ステージ上からお客さんがたくさんいる前方をまともに見ることができず、終始うつむき加減だったから余計にその日の服装を覚えている。

イベントが終わったあと大阪・北新地での打ち上げにも参加させていただいたのだが、高級小料理屋の座敷の一室で隣りに小坂忠が座って酒を飲んでいるこの空間に自分がいることがとても非現実的だった。ここでの記憶も曖昧だ。というより夢見心地というのだろう。覚えているのは白子が抜群に美味かったことくらいだ。

もうひとつだけ覚えていることがある。いや、これは忘れようにも忘れられない。北新地の店を出て、現地解散するときに小坂忠が僕にかけてくれた言葉だ。


「がんばれよー、24歳!!」


何気ない一言だ。だが生涯忘れることができないだろう。大切にするものというのは、形あるものだけではない。そう思った。今もそう思っている。