bannai452007-10-10

■Times Like These + Live On Breeze Hill 〜A Memorial Edition〜 / Rick Danko (YDCD-0071/2)■

dreamsvilleのカタログで、CD番号YDCD-70から73まではザ・バンドのメンバーのソロ作品が並んでいる、という粋な流れだ。YDCD-70は前回取り上げたガース・ハドソン、YDCD-73はジム・ウィーダー、そしてYDCD-71と72はリック・ダンコの遺作となった作品が2枚組で登場する。最後のスタジオ音源『タイムズ・ライク・ディーズ』と最後のライヴ音源『ライヴ・オン・ブリーズ・ヒル』。絶頂期のリック・ダンコと比べてみると...などとそんな野暮なことを言うつもりはない。天に召される前の歌心に溢れるリックがしっかりと記録されている。

リック・ダンコが他界したのは1999年12月10日。死因は特にない。安楽死というものだった。眠るように静かに逝ってしまったところがこの人らしい。ザ・バンドのムードメーカーは最期まで皆を驚かせてくれたのである。

ディスク1の『タイムズ・ライク・ディーズ』の収録曲は10曲。うち2曲はライヴ音源。実質スタジオでレコーディングされたのはわずか8曲。レコーディング期間は98年から99年、リックの死はその制作途中の出来事だったということになる。リヴォン・ヘルム、ガース・ハドソン、ジム・ウィーダーらが随所で温かくサポートし、リックのオリジナル、サム・クックの「チェイン・ギャング」や76年にエリック・クラプトンと共作した「オール・アワ・パスト・タイムズ」、ザ・バンド時代ボブ・ディランとの共作「火の車」をスパニッシュ・アレンジで聴かせてくれる。冒頭の「タイムズ・ライク・ディーズ」は70年代に書かれたもの。この珠玉のバラードはリックのソロ時代の作品のなかで僕のフェイヴァリット・ソングだ。

ディスク2『ライヴ・オン・ブリーズ・ヒル』は98年から99年頃のリック・ダンコ・バンドでのツアーの模様を収録したもの。「たそがれの流れ者」、「ステージ・フライト」、「オフェリア」、「カレドニア・ミッション」、「ザ・シェイプ・アイム・イン」、「チェスト・フィーヴァー」、「同じことさ!」とザ・バンド時代の名曲を惜しみなく披露。特に後期の名曲「同じことさ!」は何度聴いても胸が震える。

間もなく没後8年。次の新作は、とか、ひょっとして来日するかも、というような期待をリックに抱くことはもうできないが、CDやレコードを聴き入り、あるいは『ラスト・ワルツ』での勇姿、『フェスティヴァル・エクスプレス』での(おそらく)マリファナとアルコールでハイになってはっちゃけているリックを堪能しようではないか。それらとこの遺作があれば十分に満足である。

タイム・ライク・ディーズ+ライブ・オン・ブリーズ・ヒル?メモリアル・エディション?

タイム・ライク・ディーズ+ライブ・オン・ブリーズ・ヒル?メモリアル・エディション?