■Homemade Songs / Bobby Charles (2008)■ 湖畔で愛犬と戯れていたボビー・チャールズも気付けばもう70歳である。キャリアは実に53年。だが、発表したアルバムは編集盤を除けば僅か6枚。キャリアと作品数がこうも反比例するアーティストも珍しいものだ。それ…

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■Bleecker Street Greenwich Village in the 60's (1999)■ アメリカ音楽史に限られたことではないが、その土地その土地によって生まれる音楽の面白さというものがある。地域性、文化、気候などでその特色は様々だ。広大なアメリカ大陸だとそれはなおさらのこ…

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■At Home / Lambert & Nuttycombe (1970)■ 例えば10月のある日曜日の朝、乾いた空気をゆっくりと肺に送り込んでみる。点てたコーヒーがあればなお良しだ。木造の古い小屋のような家屋は、歩くたびに床の軋む音がする。窓から空を見上げると、肉眼では確認で…

■People / 小坂忠 (2001)■ このアルバムを冷静に、あるいは客観的に聴くことは僕には不可能だ。24歳の頃の想い出が詰まったかけがいのない1枚。「夢を聞かせて」を聴くたびに訪れる感動は今も色褪せない。優しく包み込むような音、ドラムとベースがまるでお…

■Having A Wonderful Time / Geoff Muldaur (1975)■ ブルーズ、ジャグバンドという下地をまずこしらえておき、ジェフ&マリア〜ベター・デイズを経たジェフ・マルダーが75年に発表した世紀の傑作アルバムだ。何年もかけてコトコトと熟成したかのような旨味、…

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■Gorilla / James Taylor (1975)■ 黒々とした無骨なラジカセのプレイボタンを押すと、ばちんという音とともに、ボタンは本体へ深くゆっくりと沈み、よれたテープがヘッドをこする。 There's a symphony inside you... ジェイムス・テイラーの「ミュージック…

■Dusty in Memphis / Dusty Springfield (1969)■ アリサ・フランクリン、ウィルソン・ピケット、レイ・チャールズらの諸作に触れれば、プロデューサーであるジェリー・ウェクスラーの存在を避けて通ることはできない。ジェリー・ウェクスラーの訃報を聞いた…

■Over The Rainbow / Livingston Taylor (1973)■ 地面をしっかりと隙間なく濡らした雨降りのあとのように、ほのかに湿り気を帯びた柔らかいサウンド。その湿り気によってむせ返ることはない。太陽と雨の香りに包まれ、緩やかに、たおやかに僕の身体は揺れる…

■Natural Progressions / Bernie Leadon & Michael Georgiades (1977)■ 夏の終わり、午後4時に聴くのがいい 橙色に染まり始めようとする空を見上げ 物思いに耽る

■Silver / Silver (1976)■ 音楽の真実。 夏の盛りが少し衰え出す頃、思わず手が伸びる1枚だ。ビッグ・ヒットを放ったわけでも、その後のシーンで大きく活躍するスターが在籍していたわけでもない。70年代のロック・シーンに星の数ほど存在したマイナーなグル…

■Summer in the City / The Lovin' Spoonful (1967)■ Hot town, Summer in the City, back o' my neck gettin' dirt and gritty. Been down, isn't it a pity; Doesn't seem to be a shadow in the city. ジリジリと 照りつける太陽のせいで 苛立つ街の雑踏 …

■rare tracks Series Good Times Roll Vol.1 (2005)■ 公式非公式音源とでも言うべきレア音源集。当時のライヴ会場のみで販売されていたもので、録音は2005年4月、ほぼ一発録りによる5曲を収録。既存楽曲にアレンジを加えたものと未発表音源を収録したものだ…

■Tarzana Kid / John Sebastian (1974)■ セバスチャン・ファンの多くは彼のベストとして挙げる人気盤で、僕もそのひとりである。エイモス参加アルバム、というだけでは補いきれないほど魅力に溢れている。セバスチャンの知性を西海岸の気候にさらし、太陽の…

■Stand By Your Man / Candi Staton (1970)■ キャンディ・ステイトンの『スタンド・バイ・ユア・マン』に針を落とすとき、あのレコード店を思い出す。東心斎橋にあったACE RECORD。ブルース、ソウル・ファンには非常に有名な店だったはずだ。中途半端に物色…

■まっくらやみのにらめっこ / ハンバートハンバート (2008)■ 世間に媚びへつらうことをやめ 潔さと虚無感が同居している 加えて 初期の頃の彼らに感じた あのおどろおどろしさ 例えば 日本のおとぎ話にあるような 新境地開拓とか そういう安易な言葉で片付け…

■Maria Muldaur / Maria Muldaur (1973)■ 西、東、南、とアメリカ各地から一流のプレイヤーがこれだけ参加したアルバムというのも珍しい。カントリー、ジャズ、スウィングから同時期のSSW作品など、基盤となるのは選曲の妙味とバックアップするミュージシャ…

■The Esso Trinidad Steel Band (1971)■ カリブから届く熱い風 23人のパンメン 彼らの熱い想いは 柔らかなパンの響きに溶け込んでいく カリブの熱いグルーヴ 僕の脳に溶け込んでいく

■ひこうき雲 / 荒井由実(1973)■ そういえば叔母がユーミンのファンだった。習字の先生をしていた叔母が書いていたカセットテープの字がやけに達筆で、幼いながらもそこから流れるポップな音楽と、その字体とのギャップを感じていたような気がする。その叔母…

「赤い傘ツアー」にあわせたかのような雨模様の中、数ヶ月前まで住んでいた街に訪れた。いつも煙草を買っていたコンビニに立ち寄り、cafe marthaへ向かうと、高田渡の写真展が催されていた。高田渡の他にも村上律、遠藤賢司、松田幸一、なぎら健壱、永井よう…

■Fifth Avenue Band / Fifth Avenue Band (1969)■ 色褪せない感覚 永遠に続く瑞々しさに いつも胸が高鳴る 1969年 ニューヨーク五番街から届けられた音楽の奇蹟

■Kim Suchol / キム・スチョリ (2008)■ ラリーパパ時代、「黄金のうたたね」という楽曲でキム・スチョリが「続きは夢で見ようか」と歌った一節が忘れられなかった。待ち望む、すなわち待望の、キム・スチョリのソロ音源『キム・スチョリ』が手元に届き、僕は…

■Rocking Chair Girl / 笹倉慎介 (2008)■ 模倣ではなく、伝承。 笹倉慎介。27歳。静岡出身ながら、70年代のあの空気に憧れ埼玉県入間市の米軍ハウスに移住し、その自宅にスタジオを作ったという。そこでレコーディングされたのがデビュー作『ロッキンチェア…

タワーレコードに出向き、小尾隆さんの新刊『my favorite of US Records』を手に取ってみた。ご自身のブログでも製作過程を知ることができていたこともあって、(失礼極まりないが)いちファンとしても「満を持して」という思いがあったりもした。一般的なロッ…

■Get Way Back A Tribute To Percy Mayfield (2008)■ 結局、エイモス・ギャレットのプレイというのはあの当時に完成されていたのだ、と新作を聴くたびに思う。パーシー・メイフィールドへ捧げた『ゲット・ウェイ・バック』はエイモスのソロ作としては最高傑…

ベター・デイズ名義の正規盤としてはスタジオ録音の2枚と、未発表音源の一部がベアズヴィル・ボックスと再発盤に収録されているが、99年に日本のみの発売となった73年の未発表ライヴ『ライヴ・アット・ウィンターランド』も重要だ。オリジナル作品として捉え…

■U.F.O. / Ron Davies (1973)■ ロン・デイヴィスが5年前に亡くなっていたことを最近知った。老いても元気に新作を届けてくれていたわけではないが、この世に存在していないことを知るとやはり切なくなるものだ。ロン・デイヴィスの名作となれば、もちろん『U…

■Recycled Recipes / Donavon Frankenreiter (2007)■ 波乗り未経験の僕ではあるが、波乗り人たちが好む音楽に心が惹かれてしまう。古くはイーグルス、ジャクソン・ブラウン、シルヴァーなどを筆頭とする70年代アメリカ西海岸産の良質音楽。波乗り人を通じて…

■New Orleans Jazz & Heritage Festival 1976 (1976)■ 死ぬまでに一度は体験したいフェスは、これだ。今年も4月25日から27日までと、5月1日から4日までの計7日間行われている。今頃はちょうど折り返しだから、文屋さんも後半戦に備えているだろうか。現地で…

■It All Comes Back / Paul Butterfield's Better Days (1973)■ デビュー盤と同じ73年発表のセカンドアルバム。白人ブルースの着地点を前作とするならば、今作はルーツ・ロック・バンドの新たなる出発点とでもいうべきか。南部色、特にニューオーリンズ寄り…

■Rod Taylor / Rod Taylor (1973) アサイラムの、デヴィッド・ゲフィンの根回しにより豪華なメンツが集結し、良質な音楽世界を構築したにも関わらず、その思惑と戦略が見事に外れてしまった不遇の名作だ。ジェシ・デイヴィス、ライ・クーダー、ジョ二・ミッ…